扇の国

人から勧められて、六本木のサントリー美術館「扇の国、日本」展を観てきました。暖かい土曜の午後で、街には幸せそうな人々が三々五々、出歩いていました。この美術館が移転してから初めて入るので、きょろきょろしながらチケットを買い、上下階に亘る展示を観ました。折りたたみ式の扇は日本特産で、古くから輸出されていたこと、金銭代わりに使用されたことなどを知りました。

扇面で切り取った構図の面白さは、平家物語の絵画資料調査をした時から関心を持っていたのですが、扇面の使い方、配置にもいろいろあることが判りました。扇流しのデザインは、絵画のみならず工芸品にも愛用されたようですが、落花と共に紙が破れて流れていく扇を彫った鐔には、一体どんな人が使ったのだろう、と想像を誘われました。

お目当ては個人蔵の「源平合戦扇面貼り交ぜ屏風」です。解説には注文主が場面を選んで描かせたであろうとありました。屏風は絵よりも新しく、貼り直したと思われます。『曽我物語』の富士巻狩りや、『北野天神縁起』絵もありました。近世では扇面絵を貼る屏風には秋草の下絵を描くことが多い、と解説にあって、秋扇は悲しい、季節外れのシンボルだと思っていたのに意外でした。涼風のイメージなのでしょうか。

歩き疲れたので、ミッドタウンの喫茶店で、スパゲティを食べて一休みしました。乳母車を押した若いママや、おしゃれした中国人の女性や、勿論カップルも入っていて、気軽に遊びに来ている感じでした。往きは大江戸線の階段を120段も降りて来た(パラリンピックはどうするんだろう?)のですが、帰りは日比谷線霞が関で乗り換えました。50年前、初めての職場に通勤したルートです。

「扇の国、日本」展は明日まで。3月20日から5月6日までは山口県立美術館で。