太平記三本対照表

軍記物語講座第3巻『平和の世は来るかー太平記』の付録として、三本記事対照表を載せる計画を立て、その打ち合わせに出かけました。厖大な記事量を擁し、しかも諸本の関係や、通読しやすいテキストについて十分知られているとは言い難い太平記の場合、こういうツールは待望されていたと言っていいでしょう。作る人の苦労は大きいが、得られる便益はそれを上回って大きい。

小規模な講座なので、付録資料に宛てられる頁数は限られています。どれだけ必要な情報を、見やすく、間違いのないように詰め込めるか、作成者と助言者、それに編者と編集者も加わって議論しました。巻ごとの章段名と日付を基準に、古態を多く残す西源院本(岩波文庫)、史実にこだわる天正本(新日本古典文学全集)、近世から近代にかけて広く読まれた流布本(日本古典文学大系)の三本を対照して、大きな違いが一目で分かるようにしたいというのが狙いです。表記法や活字をあれこれ工夫しながら、作業が進められることになりました。

飯田橋から南北線で帰り、東大農学部前の喫茶店で一休みしました。下宿から息抜きに来たらしい学生が2人ばかり、静かに何かを読んでいました。永年の煙草の匂いがしみついた、老母と息子の2人でやっているらしい店です。出る時に創業から何年目かと訊いたところ、今年で63年目、という答えが返ってきました。