人面花

朝、南向きの硝子戸を開けたら、街の音がざわざわと押し寄せてくる。一瞬、何かあったのだろうかと思いましたが、今日は南風で、音が吹き寄せられてきているのでした。昨日の風の冷たさとは変わって、春が近いような錯覚を起こしましたが、勿論未だ未だです。

三色菫を植えました。いつもは年末に、日々草ビオラや三色菫に植え替えるのですが、最近は派手な宿根草ばかりが店に出て、やっと昨日入手することができた苗です。三色菫は人面花とも呼ばれると聞いたことがありますが、何だかブルドッグを連想します。子供の頃、自動車の前面や草花が人の顔に見え、大抵の花は笑顔に見えるのですが、三色菫は何故かしかめ面に見えました。

ヒヤシンスの芽が出ました。枯れ菊の根元には銀色がかった新芽がびっしり出ています。18年前、世田谷に住んでいた頃、春先に近所の家の垣根越しから、やわらかな菊の芽がこんもり茂っているのを見て、これこそ平和の象徴のような景だと憧れました。陽だまりに菊の芽萌ゆる小庭にて老後しづかに暮らさむとおもふ―当時は遠距離通勤と親の介護に振り回されていましたが、その時の勤務先は65歳で定年になるはずだったので、自分の10年後を夢想したのです。

あの夢は半分実現し、半分は未だに叶っていません。70歳で定年になりましたが、今日も、飛び込んでくる連絡メールに逐われています。