写真を撮る

行きつけのクリーニング屋に行ったら、新年らしく富士山の写真が何枚も飾ってありました。主の趣味が写真撮影なのです。なかなかいい写真もあり、黙って帰るわけにはいかないので、水を向けたところ、いつもはクールな商売人なのですが、忽ち早口になり、ダイヤモンド富士が池に映った、大判の1枚を取り出しました。もう10年間、1月2日には富士山の撮影に通っているのだそうです。しかしなかなか決定的瞬間は撮れないものだそうで、ダイヤモンド富士になる瞬間に風が吹いて水面に波が立ったり、ちょうど雲がかかったり、しかも撮影ポイントは私有地なので、立ち入るだけで撮れても撮れなくても、¥1000取られるのだそう。今年は10年目の御褒美だった、と話していました。もう年も取ったから、来年はやめようかと思っている、とも。

私も若い頃は、写真撮影に凝りました。モノクロフィルムの時代です。貴女が撮ると必ず、近景中景遠景が入ってるね、と友人にからかわれたりしましたが、カシャッというシャッター音と共に風景を切り取る時の快感は、何とも言えません。カメラの性能がよくなって、至近距離からの大写しが出来るようになったのが嬉しかったのも、覚えています。

いつ頃からやめたのだったでしょうか。旅も仕事が目的になり、よけいな荷物を持ち歩けなくなったり、風景写真を撮る余裕がなくなったりしたからでしょうか。カラー写真、デジカメ、と進化するにつれて、興味を失ったせいでもあります。撮影の面白みはやはりモノクロ写真が一番、と今でも思います。