田村伝承

佐々木紀一さんの論文「田村利仁伝承と鹿島神の縁起」(「国語國文」5月号)を読みました。室町物語の『田村草子』、『鈴鹿草子』、奥浄瑠璃『田村三代記』などの構成要素を多様な資料の中に求め、室町時代には田村利仁伝承が鹿島縁起と交錯していたと予測しています。佐々木さんの資料博捜にはいつも舌を巻くばかりで、それらが同一線上に扱ってもいいものなのか、判別しかねて見守るだけ、という場合も少なくありません。おまけに、勤務先の雑誌数種に毎年寄稿しているのですが、その中には国会図書館にすら所蔵されていないものもあって、入手するのに苦労します。

ぜひ、単著として刊行して下さい。平家物語で1冊、周辺の資料探索でもう1冊(中世の豊穣かつ奇怪な伝承世界が展開されるでしょう)で出せるくらいの量はもう貯まっていると思います。出そうという版元もあるはず。なお仮名遣いは、現代仮名遣いにして下さいね。