高校野球

高校野球が始まりました。東京育ちは、代表校とあまり縁のない場合が多いので、盛夏名物ともいえる熱狂とはやや距離があります。地方勤務のおかげで、贔屓する対象ができ、ベース1周したら1点、くらいの知識しかない私でも、関心を持てるようになりました。かつての赴任地、鳥取、栃木、愛知、そして父祖の地福岡の順で応援します。

鳥取を離任するとき、学生から「鳥取へ来てよかったことは?」と質問され、「高校野球で応援する楽しみができたこと」と答えたのですが、けげんな顔をされました。夏休みに帰京して東京版のスポーツ欄を見たら、東京代表校の監督がインタビューで「初戦は楽に勝ちたい。例えば山陰の代表校なんかと」と話し、初戦で鳥取代表とぶつかって敗退、痛快でした(鳥取代表は2回戦で、当時の天理に当たって敗退しました)。

鳥取は、代表校になるための試合数が一番少ない県です。しかも毎年、代表が入れ替わります(一強がない)。進学校が代表になることも珍しくありません。あれが去年の甲子園エースですよ、と指さされる学生が、ごくふつうに大学の国語科にいたりします。高校野球の本質はこうでありたい。文武両道―10代までは、それが理想ではないでしょうか。