梨列車

鳥取は夏の終わりに20世紀梨、冬の初めに蟹の初出荷という大事な節目があります。鳥大教育学部に在任時代、現職の先生が内地研修の挨拶に見えました。ゼミの学生に何か教訓になるお話を、新任時代のこととか、とお願いしました。ちょっと苦笑いした後、次のような話をしてくれました。

国語と音楽の免許を取って、初任校は賀露中学だった。ギター1丁持って(当時はフォークの時代でした)赴任、校長に挨拶に行ったところ、「8月31日に賀露駅から梨列車が出る。ついてはそれまでにブラスバンド部を仕上げて貰いたい」とのこと。(毎年初物の梨は、まず各梨園から選り抜きの500個が集められ、その中から白手袋で50個が選び抜かれ、2箱に詰められて宮中へ献上されます。その様子は、箱を積んだ列車の出発と共に夕方6:45のニュースで放送されるのですが、各産地の駅ごとに今年初の梨列車が地元の学校の楽隊演奏によって見送られるのです)。早速部活の練習を見に行ったら、トランペットが、やっとプーとかピーとか言っている状態。音楽は副免だったので、指揮法と作曲ぐらいしか習っていない。途方に暮れたー(ここからが教訓です)しかし、人間一所懸命にやっていれば、必ず助けが現れるもので、町の楽器屋の主人が手伝ってくれて、8月31日に列車の赤い後尾灯が消えて行くのを見た時は、涙が出た。

ちなみに蟹漁の解禁日には、賀露港で小学校の鼓笛隊が出船を見送ります。