ピーマン

ピーマンが好きになれません。油で揚げるか刻んで炒め物にすれば食べられますが、あの匂いと、ざくざくした肉厚の食感が苦手です。獅子唐は好きなのですが。

学生時代、ユースホステルを使って全国を歩きました。未だビジネスホテルなどは普及していない頃です。少し到着が遅くなって友人と2人で松江の川沿いを歩いていると、後ろから自転車で追っかけてきた人がありました。「あんたたち、その格好だとYHに泊まるんだろうけど、よしなさい!あそこはひどすぎる」と言うのですが、私達には宿を変える知恵もお金もありません。「まあ、行ってみます」と礼を言って別れました。お寺の経営するYHで、風呂は遠く離れた銭湯へ、夕食は赤い色のついた山盛りの御飯だけでした。翌朝、本堂の縁側から井戸端へ下りて顔を洗いましたが、住職から「仏様の前に下駄を脱いだ奴は誰だ!」と怒鳴られました。朝食は御飯と茄子の味噌汁と、そして今でもありありと目に浮かぶのですが、輪切りにした、さしわたし12cmはあろうという生のピーマン!植物図鑑で見る花式図そのものでした。勿論、マヨネーズとかおかか醤油とかがついてはいません。せめて塩でもあれば食べられたかも知れませんが、卓上には何もなし。住職が仁王立ちになって、「仏様から頂いた物を残す奴はどいつだ!」と怒鳴っています。悪夢のようでした。

その後、島根国体があって、YHは建て直されたようですから、今はもうよくなっているのでしょう。あの体験は、ピーマンに関するトラウマになりました。