国家神道

木村悠之介さんの「明治後期における神道改革の潮流とその行方―教派神道と『日本主義』から「国家神道」へー」(「神道文化」31号)と、「1896年における「国家神道」の用例―道生館『闇夜の灯』の神宮教批判とその反響を通して―」(「神道宗教」253号)を読みました。前者は東京大学の思想文化学科の卒論をまとめたものだそうで、力作です。後者はその資料としても重視されている「闇夜の灯」(国学塾道生館の機関誌)のうち、永らく所蔵が確認されていなかった号を発見して紹介したもの。

明治期には神道を「国家神道」と「宗教神道」に分ける考えがあって論争があり、新興宗教的な神道の分派がつぎつぎに生まれ、互いの攻撃も激しかったことが分かります。そして前者が他の世界的宗教とは違って思想的、哲学的、汎文化的なものであると説く論調が、しだいに主導権を握っていった、と近代神道史をたどっています。

超自然的なことを強調したがる神道がしだいに権力を巻き込んで論壇を支配し、やがて日本はむやみな精神論、国家至上主義にまみれて無謀な大戦への道を歩んでいった、と単純に考えていたのでは駄目だと知らされる2篇でした。改革とか、新思想などのキャッチフレーズが危ないものであることを自覚しました。真面目な哲学、民衆のための宗教も、危ない道を布くことがあるのだということも銘記しました。

木村さんは明翔会の奨学生、修士2年です。いい修論を書き、学問的交流を広げ、研究史を書き換える研究者になるよう、期待しています。