夏は過ぎ

終日、写本と対峙して過ごしました。源平盛衰記の版本の展開を追う共同研究に便乗させて貰って、16世紀前半の本文とも言われた写本を調べ始めたら、腑に落ちないことが続出。こちらの書誌学的経験が足りないせいばかりではないようです。ひたすら墨の色、朱の書き入れ、濁符・訓点、異文表記や傍注や首書等々をメモし続けました。

久しぶりに猛暑日の天気予報が出ていましたが、冷房の効いた閲覧室から出てみても、もう真夏とは違う陽光、風、地面です。ああ今年の夏は過ぎて行ったのだ、と思わざるを得ませんでした。

調べれば調べるほど謎のパズル片が増えていく。明日もまた、ここに籠もって謎の解き方を探る予定。本日の調査を終えて外へ出ると、世界には夏の最後の輝きと、到来する秋の新しさとが充ち満ちています。お茶や酒を呑んで時間を潰すのはもったいない。お茶の水橋の向こうには、総硝子張りの高層ビルが2棟も建ち、映った西日が燦めいて眼が眩みます。仲間の1人は職場へ戻って来週の授業の準備を、もう1人は別のプロジェクトのために人と会うというので、そのまま別れ、帰宅したら、半月が美しい夕方になっていました。