ポイント制

扇屋へおはぎを買いに出かけました。野上弥生子の愛した老舗です。店は年配客で混んでいました。もう初冬のゆず餅が出ています。仏壇に上げるので、父の好みの粒餡と黒胡麻のおはぎを1個ずつ買いました。まもなく消費税が上がります。扇屋にもちょっと腰掛けるスペースがありましたが、さすがにここで試食する人はいないでしょう。しかし、いわゆるイートインと持ち帰りの区別は、限りなく曖昧です。

老舗の酒屋の娘だった知人から、こんなメールが来ました―「郷里の食品関係の自営業の何人かが、この機に商売をやめると言っていました。『8%か10%かの扱いがややこしいのと、こんな小さな店で今更レジスターを変えられないし、店前のベンチで食べると10%、となると食べ歩きを増長するかもしれないし、などなど、考えるとイライラするし・・・マ、もう歳だからやめるよ』ということでした。新消費税制度には、小売商や自営業は考慮に入っていないなぁ、と感じていましたが、その言葉に暗澹たる気持になりました」。

同感です。ポイント制による減税も、何だか江戸の敵を長崎で討つみたいな違和感があって、私は利用しない所存。一律10%値上げと思って、倹約に励むしかない。今後しばらく、レジでもめる老人を見かけるのではないかと取り越し苦労をしています。納税は憲法に定められた国民の義務の一つゆえ、いやとは言いませんが、公平であることと分かりやすい制度であることが、絶対の条件ではないでしょうか。

入試と税徴収とをずたずたにする制度改革は、亡国の仕業ではないか。そんな憂鬱を抱えてとぼとぼ帰ったら、近くの天神様の秋祭の先触れ太鼓に出会いました。6歳くらいの女の子が屋台車の上で、祭半纏を着て上手に叩いている。この平和をいつまでも。