越前だより・安宅関篇

福井高専の大谷貞德さんから、石川県立図書館へ調べ物に行ったついでに、北陸合戦の跡を訪ねてきた、と写メールが来ました。

実盛塚

幼い義仲を木曽の中原兼遠に預け、平重盛孫六代の側に息子2人を付け、自らは老兵と侮られたくないと白髪を染めて出陣した、という挿話で有名な斎藤別当実盛の墓と伝えられる場所です。実盛の首を見て、立派に育った義仲とその側近たちは、彼の遺志を理解します。平家物語はこうして、一時の敵味方を越え、言葉を超えた人間のあり方を語るのです。大谷さんの写メールには、塚の手入れが行き届いていて、地元から大切にされていることがよく分かった、というコメントがついていました。

梯川

源平両軍がこの川を挟んで対峙した、という大河です。国土交通省の河川情報によれば、白山の一部に発し、安宅関跡の近くを通って日本海へ注ぐ、とあります。

安宅関跡

実盛首実検や勧進帳に因む巨大な銅像があるそうですが、森閑とした林の底に松落葉が溜まっている風景は、半世紀以上前に私が白黒カメラで撮ったのと変わりません。

石川県立図書館は大変賑わっておりました。自由にくつろげる場所、食事をするところ、学習のスペースなどあらゆるところに気配りがされているなと思いました。福井県の図書館も、蔵書数も含めよく整備されているなと感じております。】

県立図書館が充実したのは、私が鳥取を離任した後のことでした。しかし建物やシステムは古くても、県立図書館の選書は水準がきちんとしていて、名前の残らぬ司書の仕事ぶりに、ひそかに感服したものです。栃木県では大学図書館がまるで使い物にならず、学生は県立図書館に頼っていましたが、何しろ蔵書数が少ない。近年は公立の博物館や図書館の水準が上がって、喜ばしいことです。