東大が来年度入学者から授業料を値上げするという。学部生は年間¥64万2960、大学院修士課程は2029年度から上げるのだそうです。その代わり、授業料全額免除の条件を世帯年収¥600万以下にする、2021年度の学生の54%が世帯収入¥950万以上なので、影響は小さい、と判断したらしい。総長は、学生の意見も踏まえて決めたと言っているそうですが、何だか寂しく、悲しい。
新聞報道によれば、日本はOECD加盟国の中で、高等教育機関の資金に占める公的財源は37%、OECD平均は68%だというのです。また教育資金の家計負担は日本が約半分なのに対し、加盟国平均は19%とあって、眼が点になりました。これはゆゆしきことではないでしょうか。防衛費をGDP比率で決めるなら、国の教育・文化関係予算の比率もそうあっていいのでは。長期的な国力は、結局、文化度で決まるものだからです。
かつて国立大学は、質実剛健、野暮だけどワイルドな、芯のある人材の育つところでした。スマートな、裕福な私学からは莫迦にされながらも、国の将来を託すに足る若者を育てている、と納税者から信じられる所だったと思います。それは貧しさを恥じない、かつ学問や信条の自由が保障されている場だったからでしょう。今や入学する前に格差が生じていて、教員たちもそのことに慣れてしまってはいないか。
高齢化、晩婚化のせいでちょうど子の大学院進学と親の定年がぶつかるケースも増えました。大学教育無償化が実現したら、問題は解決するのでしょうか。
平和憲法があり、教育普及率が高く、物づくりに優れた国ーそれが私たちの愛する祖国だった、と昭和世代は思います。次期の総理は私だ、と言い募っている人たちに、その祖国観を問いたい。あなたが誇りに思う日本は、どんな国ですか。