秋色の木曽路(2)

24日は好天、かつては尾張信濃の境だった桜沢をトンネルで抜けると木曽路です。シンさんの知人木曽路ウオークガイド会の柳川さんの案内で、義仲伝承を中心に薮原ー八沢を巡りました。宮ノ越にある義仲館は、2年前にリニューアルした際に現代のアーティストのセンスを採り入れたとかで、全国の義仲伝承地の一覧やアニメ、大河ドラマの図像などが展示してありましたが、訪れるのはシニアが多いらしい。

義仲館

すぐ傍に義仲の菩提寺徳音寺があります。半世紀前の夏、中学以来の友人と2人で、ここから馬籠・妻籠へ抜けた時は大夕立に遭って裸足で歩き、この寺で雨宿りをしたものでした。彼女が逝ってから45年が経ちましたが、ふと、縁側に2人で座っているような錯覚を起こしました。ウメモドキの実が眼底に残りました。

徳音寺の鐘

本堂の裏には義仲やその一族の墓があり、巴は龍神伝説と結びつけられて伝承されているようです。義仲の伝記は史料にはあまり残っていないのですが、地元にはいろいろな伝承があるようで、平家物語源平盛衰記の記事とは別に生まれた話も多い。巴が水浴びをしたという巴淵の袂には、紅葉が美しく輝き、野紺菊が咲いていました。

旗挙八幡宮

義仲が挙兵を祈願したという小さな八幡宮。その脇には樹齢800年という大欅が、雷に幹を裂かれた姿のまま茂っており、前面は義仲が住んだ館跡という広い空地で、一列に茱萸の木が植えられ、白銀色の葉が風にそよいでいました。

御嶽の見えるスポットを目指して木曽駒高原を走ると、沿道の所々に溜息の出るほど美しく紅葉した木が現れます。針葉樹も多いので一面の錦というわけにはいきませんが、思わず歓声を挙げるほど綺麗でした。あいにく御嶽山には雲が懸かっていましたが、山ごとに特別な愛着のある故郷、という感覚がよく分かりました。

山下

2歳の義仲(幼名は駒王丸)を預かった中原兼遠の館跡は、山下という地にあり、義仲が手習いや相撲の上達を祈ったという小さな天満宮も、近くにありました。

手習天神

その後木曽福島の関所を守る代官山村代官屋敷を見学、屋敷神の稲荷神社から維新の時に発見されたという狐のミイラを見た後、薮原宿で、お六櫛組合の副組合長でもある柳川さんの櫛作り実演を見せて貰いました。木曽路の名物、70年以上前、祖母が髪を梳いていたのもこの櫛でした。道具や研磨の素材にいろいろ工夫があって、感心しました。

お六櫛の歯を作る

老舗で栗の銘菓を買い求めた後、幾重もの山に光と影が移っていく時間を追いかけながら帰りました。