開戦1941

Nスペ「新・ドキュメント太平洋戦争~1941開戦~」を2日に亘って視聴しました。真珠湾攻撃から80年の記念日を前に、「さきの大戦」を国から押しつけられたものとのみ捉えるのは誤りで、国民の多くが切望し熱狂した事実を忘れてはならない、というメッセージを籠めて制作されたと推測しました。そのメッセージそのものには賛成ですが、全体的に薄味の印象を持ちました。戦後76年、実体験としてのあの時代はもう再現することが不可能に近くなり、いわば二番だし、三番だしのような水っぽさを感じたのです。

しかし驚いたのはその制作手法でした。当時のさまざまな人々250人以上の日記をAIに読み込ませ、現代のSNSトレンド分析の方法を用いてデータ化した、というのです。なるほどこれは、NHKでなければ出来ない規模と技術でしょう。画像も当時の写真・動画の一部に彩色を施し、また(多分)再現映像もふんだんに交えて現実感を出し、アクセントをつけようとしていました。

画面を視ながら感心したのは、あの時代の人たちはみんな字が上手だなあ、ということです。万年筆で書いている場合が多いので、未だ毛筆の雰囲気がある。日記を書くほどの教養人だからだろう、というのはあまり当たっていません。あの時代の人たちは誰しも日記や備忘録を書きつける習慣があったのです。たとえ片仮名しか書けないような教育を受けていても、書き残しておく、という意識は今よりずっと強かった。

この2篇を視た限りでは、そもそも中国大陸に攻め込んだところから我が国の失敗は始まったと思いました。つよく印象に残ったのは、資源のない日本が自存自栄のためやむなく開戦する、はずだったのに、大東亜共栄圏建設などという大言壮語が押し込んできて、どこで戦争をやめるかが見えなくなってしまった、との一部の軍人の嘆きでした。