鏡開き

30年くらい前までは、3寸の鏡餅を玄関に、1寸を仏壇に置く慣わしでした。裏白、楪、橙代わりの蜜柑のほかに我が家では、父がお年玉を作って載せることになっていました。お年玉とは、和紙に米粒と海の幸、山の幸を少しずつ包んで、紅白の水引で括り、ちょうどてるてる坊主をさかさにしたようなものです。子供の頃は、煮干しと干柿などを入れていましたが、時代が変わるにつれ、削り節と乾葡萄になったりしました。

鏡開きには3寸の餅は和菓子屋に持って行くと、舂き直して大福餅にしてくれたものです。しかし室内が暖かくなったせいか、次第に黴が増えて舂き直しは出来なくなり、勿体ないので全て1寸にし、食べるのは諦めました。近年は真空パック鏡餅を売っているのでそれを飾っていたのですが、次第に余計な飾り(プラスチック製)が付くようになり、使えなくなりました。扇屋で1寸を2つ誂えた年もありましたが、去年からは丸餅を買ってきて2個重ねて飾り付けることにしました(しかし誤算だったのは、ひらた過ぎて、仏壇に上げても餅が見えないことです)。

以前よりも室温は高いはずですが、エノキさん曰く「この頃の餅は黴が生えないんですよ!」。そう、3寸を誂えていた時は緑や黒やピンク、色とりどりの黴が生えたのに、2週間飾った丸餅は青黴がちらほら見えるだけ。青黴はペニシリンの素だから、とぜんざいを作ることにしましたーところが洗ったら、餅は粉々に割れ、米粒大に。えっ、どうして?途惑いましたが、器に入れて電子レンジにかけてみました。都会暮らしで餅を焼くのは結構難しい。雑煮用の切餅をクッキングシートに包んでチンしたら、包みの形の団子ができた経験から、餅に戻るのではないかと思ったのです。歯が立たないほど硬い破片と餅との塊ができました。ともかく、買ってあった茹小豆をぶっかけて温め、今年の鏡開き。