意欲

新聞の見出しに「首相五輪有観客に意欲」とあるのを見て、この人が意欲を燃やしたとてどうなるんだ、と思いました。政府のコロナ対策分科会有志の意見書に、ネット上では賛否両論、中には会長への口汚い誹謗中傷も多くて、この国の民度に愛想が尽きそうです。そもそも意見書は26人の連名で、個人が出したものではない。内容は至極まっとうなことです。この状況下、人を多く集めて興奮させるような催事は「望ましくない」、どうしてもやるなら、対策計画とその目安を早めに、明確に周知せよ、と言っています。

殊に会長が感情的に危機感を煽っている、という非難は当たっていない。感情的なのは勇気とか元気とか、団結とかいう美辞を掲げて有観客五輪に期待を持たせ、コロナに打ち勝ったとの幻想を演出しようとしている方でしょう。

会長個人の履歴を見れば、学者ではなく行政と感染予防のせめぎ合う現場を践んで、ポリオ撲滅の実績もある人です(ポリオがどんなに悲惨な病だったか、もう知らない人が多いのでしょうね)。じれったい感じもしますが、今回の意見書はぎりぎり、この立場の責務を逃げなかった、というべきでしょう。悲観論も楽観論も、あまりに未知数の多い方程式を解いているからには、仮説(賭け)の部分が大きいのは同じ。要は慎重な方策を採るか危険の多い方策を選ぶかですが、その結果を負うのは自分自身だけではないのだから、慎重な方を選ぶのが良心的です。

五輪入場券を入手するまでには苦労が多かったとは思いますが、この際、寄付したと思って、会場へ行くのをやめませんか。代わりに実行委は、関係者に配るはずだった記念グッズ(64年五輪では、聖火と五輪をデザインしたネクタイピンとハットピンのセットだった)をプレゼントする。こういう時、しぶい大人が言う科白がありますーいい夢を、見させてもらいました。