古活字探偵8

高木浩明さんの「古活字探偵事件帖8」(「日本古書通信」8月号)を読みました。異植字版とは、一旦組んだ版をばらして、同じ活字セットを使って組み直した「別版」を言うのだとした上で、部分的に異なる活字に差し替えられた場合について書いています。高木さんはこういうケースを部分異植字と呼び、字母の違う仮名に換えた例を挙げています(文章の意味は同じだが活字が換えられたことは明らか)。何故そんなことをしたのか。1回しか使われていない活字を換えていることから、活字が傷んだからではないようですが、何か区別をつけたい理由があったものかどうか、未審らしい。

本誌には牧野富太郎が石版刷を習った太田義二工房制作の「母子像」(森登「牧野の石版画」)を始め、珍しい写真や面白い記事がいろいろ載っています。塩村耕さんの「旗本中野又兵衛の人間味ある日記」、昔も今も官僚はメモ魔になるようにしつけられるんだなあと微笑ましい。石川透さんの「奈良絵本・絵巻の研究と収集47 徒然草白描本」、徒然草に絵巻や絵入り本があるのはちょっと不思議な気もするのですが、淡彩、白描が多いのは頷け、画家の創作欲を刺激する理由を考えると面白い。

本号には偶々なのか、仙台の古書店を訪ねる話が幾つもあり、旅心をそそられました。最近必要があって幕末維新頃の長州に関心を持っているのですが、伊藤博文塙保己一の息子を誤解により暗殺した話(牧村健一郎「山尾庸三と明治2」)には仰天。

丸山薫吉井勇の話も懐かしいが、川島幸希さんの芥川龍之介の署名入り初版本コレクションの話(「「署名本の世界」みたび②」)には吃驚、世にはこういう情熱もあるのだなあ、と感心しました。仁木悦子はカリエス闘病の作家として、『猫は知っていた』などに親しんだので懐かしい(小山力也「不思議な作家旧蔵書」)。