古活字探偵2

高木浩明さんの連載「古活字探偵事件帖2」(「日本古書通信」1123号)を読みました。「欠損活字を探せ!」と題して、古活字版と整版の見分け方の秘訣に、欠けた部分のある活字が複数回使用されている箇所を見つける方法がある、と実例を挙げて述べています。経験豊かな人は、木で彫刻した活字を並べて摺る古活字版と、1枚の板で1頁を彫る整版本とを、一目見て雰囲気で見分けるそうですし、書誌学の講座では、たまに文字が逆さまになっていたり横向きになっていれば古活字版だと教えられますが、そんなことは滅多にありません。

初心者にも分かりやすいのは、頁の外枠(匡郭)の隅に切れ目があれば古活字版、という目安です。活字版の匡郭は横棒縦棒を組み合わせますが、整版はぐるりと枠を彫ってしまうので、均等な四角い外周になります。また文字の大きさや向きが不揃いなのも活字の証拠とされ、時には、文字の一部に木目が出ていることもあると聞いたこともあります。しかし、私は調査経験から、古活字版を版下に使った場合は文字が不揃いになるし、初期の整版の中には、わざと匡郭の隅を切ったものもあるのではないか(巻子本の名残として、冊子本の題簽脇に押八双を残す習慣があったように)と疑っています。

一旦組んだ頁の植字盤をばらし、同じ活字を何度も使って次の頁を組む古活字版では、同じ傷のある活字が何度も出て来ることになります。それを見つけて判定する、まさに探偵のような作業ですね。同じ工房で印刷された版を見分けることもできます。

中学卒業時、在学生からの記念品は印鑑でした(当時は中卒で社会に出る人もいたのです)。しかしプラスチック製なのですぐ欠けました。捨てようとしたら父から、欠けた印鑑は偽造できないから貴重なんだ、と教えられたことを思い出します。