話が長い(2)

男性にも、傍の迷惑顧みず、長話をする人はいくらでもいます。典型は、①その場を自分が支配しないと気が済まない性格の人物、②反論される時間を潰してしまうために長広舌を振るう人、そして③長老(必ずしも年齢によらない)でしょう。①は殆ど条件反射的行動、②は戦略的行動ですが、③の場合、当人には自覚がないことが多い。報道で見る限り、元首相が五輪組織委員会でしくじった長話の中には、一般的な女性蔑視だけでなく、その場にいる女性陣へのヨイショが含まれています。

彼がその地位に相応しくなかった理由は、女性蔑視(とも取れる、なんて姑息な言い方はやめましょう)だけでなく、その場にいなかった女性を引き下げ、その場にいる(つまり、今の自分を囲む)人たちをヨイショする手段にしたことです。それは異論を許さず、自らにとって居心地のよい環境が第一であることを示しており、膨大な公費を使って選手や国民や関係者を危険にさらすことは考慮に入って来ていないし、事を進めるのに正当な手続きを踏んでいるかどうかの検証も飛んでしまっている。

つまりこれが、老いの証拠。TV報道を視ていた(高齢者の)私は、いたたまれない思いでした。今までいろいろな場で、そういう老人たちを見てきたし(勿論、それとは逆に、起居進退の美しい人も複数見てきました)、自分の中にも、油断すればああいう言動を取りかねない「老い」がある。

かつて未だ大学教員の定年制が普及していなかった頃、先輩女性が、いつまでも職に在り続けようとする男性についてこう言ったことがありました。年を取って、社会的言動がおかしくなり始めたら、「あなた、そろそろ家にいて下さい」と言うのが妻の務め。早く妻を亡くした男性にはその機会がないー私はその言を、肝に叩き込みました。