ハイネの毛髪

母方の従姉が亡くなった知らせが来ました。鈴木和子(1930-2021)、日本女子大学でドイツ語を教え、ハイネが専門でした。恋愛結婚した夫もドイツ語が専門で、何度か築地でご馳走になりました。夫婦ともども「恐怖の」長電話魔、相手しているうちにストーブの熱でセーターの裾が焦げたこともありました。

家を新築したから、というので遊びに行った時のこと。2階の一室にハイネ関連の書籍やグッズが展示してありましたが、シャーレに白い綿を敷き詰めたものがある。これは何?と訊いたら、ハイネの髪の毛だと言う。よく見ると、2,3筋の髪の毛が綿の上に置いてあります。どうやって手に入れたのか追及したところ、ハイネの蔵書を閲覧した時、頁の間にはさまっていたのだそうです。

家を出てから、一緒に行った彼女の妹(故石川京子。シェリーの研究者でした)と口々に、ハイネ自身の髪かどうか分からん、閲覧者の毛かもしれないじゃないか、と言い合いました。しかし、その京子も後日、何歳で死ぬのが理想かという話が出た席で、ヨットで死にたい、と口走って私を驚かせました(シェリーはヨット事故で死んだ)。

職場では勿論、身内もごく少数しか知らなかったのですが、大のつく酒豪だったらしい。仕事が終わった後、漬物か佃煮だけを肴にひっそり冷やで呑む、という本物の酒呑みです。察するに、早稲田の大学院時代に覚えた呑み方でしょう。見かけも話し方も女性っぽい人でしたが、仕事の場ではかなりの論客だったようで、決めたことは必ず通した、という評判を聞いたことがあります。

コロナ下ゆえ簡素にやるようですが、3月5日が通夜、6日が葬儀だそうです。式場は大田区の臨海斎場、お問い合わせは03-5755-2833まで。