日本書紀1300年

今年は『日本書紀』成立1300年。「國學院雑誌」11月号は、特集「『日本書紀』研究の現在と未来」です。谷口雅博さんの編集後記には、『日本書紀』が記す神武天皇即位から持統天皇譲位までが1357年、ほぼ同じ時間を編者は見通していたのかもしれない、と壮大なスケールの歴史感覚が述べられています。文学のみならず歴史学、考古学、神道学など多様な分野の論考21本が載った約400頁の1冊。祭祀や儀礼の実際に触れる論考が入っているところが、学風でしょうか。

日本書紀』は学生時代に通読し、自分の講義でも、合戦記述の嚆矢として部分的に取り上げたことはありましたが、現在の研究状況などは何も知りません。研究書に相対するのは、学部の国語学演習と大学院の上代文学演習以来なので、用語その他、少々苦心しながら読んでみました。

笹生衛さんの「『記紀』と大嘗祭」は為になりました(関連する文章として、「國學院雑誌」2月号に載った金子修一さんの「皇帝と天子」も為になった)。私には溝口優樹さんの「『日本書紀』成立後の野見宿禰伝承」、松本直樹さんの「味耜高彦根神」、居駒永幸さんの「日本書紀の歌と歴史叙述」などが面白かった。21篇の中、7篇までが景行紀を扱っているのは、今の流行なのでしょうか、それとも『日本書紀』の構造上、研究者の関心を惹く理由があるのでしょうか。

歴史叙述に関わる論考は、時代や作品を超えて軍記物語研究にも参考になることが多い、と今更ながら思いました。かつて通読した時に、「一書に曰く」という注記が多いことが気になっていたのですが、そのままにしていたことを反省しました。

編集後記に、どの分野にも期せずして若手が名を連ねているとあり、同慶の至りです。