タネツケバナ

トイレと洗面台には何かしら、生花を飾ることにしています。最近は花屋の花が高くなり、種類も限られてきてつまらないので、ベランダの手入れをする際に、心ならずも折れてしまった小枝などを活けて、楽しんでいます。鳥や風が運んできた種子で野草が生え、そんな花も、1本だけ香水瓶や小さな菓子容器に活けると、けっこうさまになります。

近所の道路と塀の隙間に、タネツケバナが詰め物のようにびっしり生え、最近は白い小さな花が咲いて、かわいいなと見ながら歩いていました。我が家の空鉢にも1本、伸び伸びと育ったタネツケバナがあって、蕾が点々と白くなってきたので剪ってみました。タネツケバナだと思うのですが、あまりに立派で、いわゆる羽状複葉と呼ばれる葉は複雑なレースのようです。草の姿だけでも面白いので、そのまま活けてありますが、どうも自信がない。ネット検索をしてみたら、よく似た格好の植物はたくさんあることが分かりました。薺の仲間です。

世田谷に住んでいた時は薺がよく目につきましたが、この辺では、タネツケバナの方が圧倒的に多い。もともとタネツケバナは田の畔など湿気の多い所を好むそうで、この近郊は、台地ではあるが湧き水の出るところだったから、植生が違うのだなあと思いました。でも子供の頃住んだ小石川で、タネツケバナはあまり見た記憶がありません。こんな地味な草には、目が行かなかったのでしょうか。

薔薇の根元にもタネツケバナが生えていますが、こちらの葉の形は同じ草とは思えないほど違う。適応力の強い生物は、環境によって形姿を変えるのかもしれません。