花屋の愚痴

クリスマスの卓上花を買いに、花屋へ寄りました。ウィンドウの中は色彩が乏しく、赤い花はアンスリウムしかない。ヒバの小枝に赤白のアンスリウムを合わせて、低く活けることにしました。帰りざまに、大晦日は何時までやってる?と訊いたら、奥からメモ帳を出してきて、去年、誰が何を買ったか記録してあると言う。我が家はたしか、南天水仙と、何か洋花、それに梔子の実つきの枝を買って、活けてみたら意外に梔子の実がめでたさを演出してくれた記憶があります。

今年は南天が駄目、と花屋の親父が話し始めました。お宅の近くのピラカンサスの藪が丸裸になっちゃったでしょ、と言う。鳥たちにも好みがあって、まず南天の実がなくなり、次に水木、ピラカンサスやコガネモチは最後に食べるのですが、今年はどこも南天が不作で、鳥が飢えているらしい。花屋の自宅の南天にも覆いを掛けておいたのに、鳥たちは下から潜りこんで、食べ尽くしてしまったそうです。

それにコロナで、市場に花が出回らない、とこぼします。春先から冠婚葬祭がなくなり、イベント会場に飾る需要もない。ステイホームで一時期は鉢物が売れたが、その後は売れないから仕入れない、品薄だから売れない、の悪循環。農水省補助金は農家の設備投資用なので、金を貰うだけで花は植えない若手農家が多いのだそうです。飛行機が止まったため、輸入物の苗も入ってこない。茶道家に約束した椿農家も、贈答用の胡蝶蘭専門の農家もやめてしまった、コロナ後も国内産はもうあてにできないだろう、と言う。

要するに、大晦日に希望通りの花はないと思ってくれ、と言われているのだな、じゃあ今年は新しい花を活けるか、とウィンドウを覗きました。薔薇はケニア、斑入りのカーネーションはコロンビアから来たそうです。松があれば、何とかなるでしょう。