四つの緒

名古屋の月見ケ岡文芸舎の会報「よつのを」13号を読みました。琵琶の4絃に因んだ名の会報です。今年は平曲の譜本『平家正節』編纂250年記念事業が始まり、名古屋・東京・仙台の3都市でイベントが企画され、その情報も満載でした。

口誦で伝わる芸能であったはずの平曲も、今や譜による伝承しかできなくなりました。近世に荻野検校が録した譜と、口誦を継いだ検校の録音を参考にして、ようやく全二百句を語ることができ、後世へ遺す事業が試みられている状況です。本誌掲載の「平曲関係諸団体情報にしひがし」によれば、今年は以下のような公演予定があるらしい。

➀毎月第2土曜・日曜13:00 羽村市医王山宗禅寺 一部平家(一ツ目弁天会)

②10月6日13:30 両国江島杉山神社 (平家琵琶普及会)

③10月20日時間未定 上野奏楽堂 巻通し平曲会(月見ケ岡文芸舎)

そのほかに④9月13日14:00 紀尾井ホール(当道音楽保存会) チケットは7月12日発売(¥3000 問い合わせ先:090-2426-1058)もあるようです。

➀②③の問い合わせ先は052-831-6414、なお記念事業の募金もやっているとのこと。

さて「よつのを」掲載の鈴木孝庸さんの論考「琵琶法師と平曲テキスト」では、従来流布本本文を応用したと考えてきた譜本の本文が、必ずしも流布本の下位に立つとは限っていない例を挙げ、演誦者が本文を創出する場合もあったのではないかと問うています。なお「僧都死去」の「ふしどをあらため」は、「改め」だけでなく「検め」という意味にも変換できるのではないかと思いました。

同じく尾崎正忠さんの「『平家正節』の読み方に思う」は故渥美かをる氏の思い出や、『平語小曲』編者の名字について述べられていて、貴重な情報でもあります。