古活字探偵14

高木浩明さんの連載「古活字探偵事件帖」14(「日本古書通信」1135号)を読みました。「横山重と古活字版五経」という題で、コレクターとして有名だった横山重氏の逸話を取り上げています。

表紙が最初に付けられたまま(原装本)か付け替えられた(改装本)かを見分けるのは案外難しい、という話題から始まって、横山氏は改装の不出来な本と、原装の端本とを買い取って、改装本の表紙を取り替えて「よりよき本として後代に残す」こともした、と書いています(確信犯です)。かつて大学図書館で勅撰集を一通り揃えようとした時のこと。端本ながらもいい本が出たので購入しておいた本のツレが、後日京都の古書肆から出陳されたのですが、惜しむらくは豪華絢爛に改装されている。どうやら趣味人の改装らしく、時代の面影がまるで喪われてしまっていたので、(購入すれば完本になるのに)申請はしませんでした。京都はちがう、とその時つくづく思いました。16世紀の本でも、自室に置く現代アートと同じように平気で手を入れるのです。京都から出た本にはそういう警戒も必要だ、と怖くなりました。

横山氏が古活字版五経の揃本という触れ込みで、補配本(取り合わせ本)をつかまされたのも表紙に騙されたのらしい、と高木さんは書いています。しかし横山氏が蔵書印を捺さなかったのは、購入後うすうす怪しいと思ったからかも。

本誌には「能登半島地震被災地古本屋の声」という特集記事も載っています。編集部が被災3県の古書店37軒にメールを送り、その返信を時系列で掲載、リアルな状況報告を読むことができます。折から房総半島に地震が頻発しており、万一に備えて何を心がけておけばよいのか、そこから考えることになりました。

[追記]本日のブログの一部に記憶違いがありました。お詫びして訂正いたします。