銀髪起業

昨日取り上げた「ゼロで死ねるか」という連載記事(朝日朝刊11/19-23)は4回目に、老後資金について書いていますが、こういう記事には実情を知らない助言が多く、屡々いらいらさせられます。そもそも統計上の数字と個々人の事情は一致しないので、細かいことは省きますが、収入が自らの努力で増やせなくなることがどんなに恐怖か、それに加えて保険料や医療費、住居費や生鮮食料品代など、回避できない経費が予想以上に増えていく現実に直面する恐怖は、私自身、現役時代には想像できなかったことでした。

そして何歳まで生きるか、何歳までが自分の健康年齢かは、まったく予測できません。後期高齢者になれば、ある日突然転んで寝たきりになることだってある。「やみくもに貯め込む必要はない」と言う評論家は、未だ収入が増やせる生活をしておいででしょう。そして高齢者が遊んだり、贅沢生活をするには、仲間が必要なのです。若い内は独りで放蕩ができますが、年寄りが安全に遊ぶにはツレが要る。

望ましいのは、高齢者が自分の意志で、余命に逆比例して資産を使いながら、共感を持てる仲間、できれば次々世代にまで拡がる集団に関わり、一定の居場所を確保できることではないか。しかし引退後になって、そういう機会を見つけ、参加していくことは難しい。「遺産は御寄付を」と謳う団体はいくらでもありますが、あまりに露骨だし、感謝状と引き換えにカネさえ出して貰えばいい、後は口を出さないで欲しい、というのが本音です。

シルバーのスタートアップ支援の誠実なエイジェントや、信託プランは作れないものでしょうか。メニューを揃えて、高齢者の希望をよく聞き、それぞれに合った居場所を築く手伝いをする。尤も今のように、高齢者が貯め込んだカネをどうにかして吐き出させよう、という底意がありあり、という社会では、詐欺や強盗が増えるだけかも。