昨夜、Nスペで、足立美術館と桂離宮の庭園を担当する庭師たちの1年間を紹介していました。松江の近くにある足立美術館は、横山大観のコレクションで有名ですが、近年は庭園が人気のようです。米国の日本庭園専門誌(そういうものがあるんですね)や仏蘭西の旅行ガイドで高評価を受け、入館者が増えているらしい。民放の番組でも外国人の庭師修業の場として紹介したことがありました。
鳥取在勤時代、同僚の車で2度ほど訪れたことがあります。もう三十数年前、確か桜が散って躑躅が咲き始める頃と、初秋の頃だったような記憶がありますが、館内は閑散としていました。大観はあまり好きな画家ではないので、大作を一通り眺め、建物が明るく無駄なく造られていることが印象に残ったくらいで、庭も、綺麗に手入れされているなという程度の感想でした。
番組で見ると、足立の庭師たちの仕事ぶりは、今どき常軌を逸していると言ってもいいくらいの完璧主義のようです。たしかに頭が下がりますが、庭園そのものはなるほど海外の人たちに賛嘆されそうな、人工美の勝った風景で、これが日本文化だと言い切ってしまっていいのか。仏蘭西式庭園に近い印象を持ちました。桂離宮の方はまた全く違う主義で手入れされていて、同じ日本庭園と言っても、一括りにはできないようです。
それにしても、個人の資金で造った足立美術館は、採算の取れない時期が永かったのでは。よくぞブーム到来まで持ちこたえたなあ、と思いました。桂離宮では、たった2人の庭師が黙々と、観月会のために樫の木の葉を透かして準備するのが印象に残りました。日本の庭園文化と言えば、やはりこういうものでしょう。
でも今は足立美術館の喫茶室にもう一度腰を下ろして、ケーキと紅茶を楽しみたい。