歌は世に連れ世は

夕食後、TVをつけたまま賀状書きをしていると、今年逝った芸能人を追悼する番組が放映されていました。我が家にはTV受信機がなかった時期があり(その間NHKの集金人がうるさくて困った)、定年後、TV視放題の境遇になってみて、当時の事実を知る度に、へえ~そうだったのか!という驚きの連続でした。欠けていたピースを一つずつ嵌めて、私の現代史が、次第に完成してきたのです。

街を流れるヒット曲は耳で覚え、殊にいいと思った曲は、断片的ながらも私的現代年表の備考欄に残っていましたが、背景となる知識は空白のままでした。

名古屋の1ルームアパートに住んで、勤務先とただ往復していた頃(1991)、ピアノをガンガン叩きながら怒鳴るように歌う曲が大流行しました。KAN(1962-2023)の「愛は勝つ」。あまりに露骨な歌詞と単純なメロディに少々辟易しながら、私も励まされていたかもしれません。調べると彼は福岡出身、なるほどああいう一面が福岡人にはある。

山田太一(1934生)脚本の「ふぞろいの林檎たち」(TBS 1983-97)が評判になっていたことは知っていましたが、サザンの「いとしのエリー」がその主題歌だとは知りませんでした。もんたよしのり(1951生)の「ダンシングオールナイト」(1980)は、「♪言葉にすれば ♪嘘にそまる」という嗄れ声のリフレーンが胸に迫りましたが、永いことみのもんたと区別がつきませんでした。谷村新司(1948生)の「昴」(1980)は、鳥取の若い同僚が自身の結婚式で、花嫁のお色直しを待つ間に歌って客を吃驚させた曲。「北国の春」と共に、中国など広くアジア諸国でも愛唱されていることは誇らしく思っていましたが、あのシアヌーク殿下も愛唱したことを、初めて知りました。

こうして、取り落としてきたものを一つずつ拾って、同時代史を補完中です。