ともしび

夕食後、BS-TVの歌番を聞いていたら、男声合唱で「ともしび」が歌われました。ああそうだ、この曲ー中学生の頃、同学年の福島の人と文通をしていました。修学旅行で東京へ来るというので、本郷の旅館に面会に行きました。当時は小石川に住んでいたので、都電に乗って、いまの本郷郵便局の脇を入った辺りの旅館まで来たのだと思います。別れ際、同級生たちと共に本郷通りまで送ってくれて、しかし何か名残り惜しい。合唱部だという彼女たちが自然に「ともしび」を歌い出し、私も一緒に歌って別れました。

あの頃、「カチューシャ」と共にこの歌は若者の愛唱歌でした。ロシア民謡だと信じていましたが、調べてみると創作曲なんですね(「ともしび」は1942年、「カチューシャ」は1938年作)。日本ではダークダックスが1956年に発売して大ヒット、その前年にはうたごえ喫茶ができ、そのシンボルとでもいうべき曲でした。ラジオではよくロシア民謡が流されました。「トロイカ」や「ヴォルガの舟歌」、「ステンカラージン」。未だ日本歌謡にも戦時中の名残りが残っていた時代の、少し後のことです。

いまこの歌詞を聴き、当時のソ連を思いやると、言葉を失います。彼国の若者たちも戦争はもう厭だ、と骨身に沁みて思った時代があったろうに。いまも戦地に赴く男子たちは後ろ髪を引かれる思いで、残された者たちは気が気ではない日々を送っているだろうに。攻められるウクライナは勿論のこと。

しかし半世紀も経てばロシアでは、あれは聖戦だった、ナチズムからの解放、欧米の敵対から祖国を守る戦争だった、という歴史が定着するのでしょうか。「ともしび」ももともと本国では、行進曲風の愛国歌なのらしい。

福島のペンフレンドは、もう名前も思い出せません。元気でいるでしょうか。