ルビー

大粒のルビーだ!箱を開けた瞬間、そう思いました。若い人からの贈り物、庄内地方の名産紅秀峰が届いたのです。手紙はついていませんでしたが、「お中元」の熨斗がかかっていたので、ああ忙しくしてるんだなあ、と思いました。

ふと、「印度の歌」が耳底に聞こえるような気がしました。♪陸(くが)に宝は満ちて 水に真珠は溢る 美(く)しき国印度 ルビーの玉は土に埋み 乙女の面(おもて)の奇しき鳥棲む・・・で始まる、R・コルサコフのオペラ「サトコ」の中の1曲です。子供の頃はよくラジオから流れていました。ソプラノの高音で、歌いにくいのですが、高畠華宵の挿絵のような、憧憬の雰囲気と共に覚えています。歌詞の細部が曖昧なのでネットで調べたところ、意外にも歌詞が入手しにくい曲だそうで、この歌詞は見つけられませんでした(それゆえ、上記の詞章は少々不確かです)。

思い返せば、あの頃はオペラやカンツオーネなど、異国の望郷の歌が愛唱され、よく聴かれていたような気がします。例えば「君よ知るや南の国」(トマ「ミニョン」)、「プロヴァンスの海と陸」(ヴェルディ「椿姫」)、「韃靼人の踊り」(ボロディンイーゴリ公」)、「帰れソレントへ」(クルティ)等々。それらは、あの頃の子供たちに、虚構ではあれ「世界」を意識させ、大人には自由への憧れを新たにさせたのかもしれません。

送ってくれた若い人は今、日本と外国の、文字通りの接点で、最前線で働いているはず。嬉しいのは、大粒の果実の贅沢だけでなく、そういう人たちの存在を身近に感じるゆえに湧いて来る、元気の有り難さです。