蛙化現象

若い世代の間で「蛙化現象」という語が流行していると知って、ネットで意味を調べてみましたが、わかったようでわからない説明ばかり、もともと心理学の用語には比喩的な造語が多くて、文学の側からはいま一つ違和感があるのですが、この語についても同じ。

ネットの説明を受け売りすると、もとは民話「蛙の王様」から借用した語だそうで、好意を持っていた異性が自分を好きになった途端に嫌になるー見下してしまう心理的現象を言い、自己評価の低い人が陥りやすい、とのこと。但し最近のZ世代(10代半ばから20代前半)の間では、好きだった人をあるきっかけで俄かに嫌いになることを言うのだそう(誤用です)。関連語として「蛇化現象」(相手を丸呑みにする、つまり丸ごと好きになる)という語も使われ始めたらしい。

「蛙の王様」ってどんな話だったっけ、と思い出そうとしましたが、魔法で醜い蛙に姿を変えられた王子に、初めは生理的嫌悪感を懐いていた王女が、愛によって大団円、というストーリーしか覚えていません。玩具を取り返してくれた蛙が愛人として振舞う途端、嫌悪感に囚われる王女ー民話の意図とはややずれた意味で使われた用語が、さらに単純化された意味に変換されて流行しているのではないかと思います。楽曲や漫画のタイトルにも使われ、主に女子高校生たちの間で流行っているとのこと。

相手が自分を好きになった途端に幻滅してしまう、という心理作用は思い当たらないでもありません。その「好きになる」、なり方によります。自己投影、もしくは自己にとって都合のいい異性だと勘違いしてるなあ、と感じる場合です。「蛇化現象」という語にも、やはり否定的な響きがあるようで、無批判に好きになってしまうことを言うのでしょうか。相手を丸ごと愛するのが究極の愛、とは考えられていないのですね。