寄付とリターン

日本に寄付文化が根付いていないことを問題視して、寄付金控除を使いやすくするという話があったのは何年前だったでしょうか。上野の国立科学博物館が、入場者減少と光熱費その他経費値上がりのため、標本類の保存管理が出来ないとしてクラウドファンディング(今どきは略してクラファン、またはCFと言うらしい)を開始、開始後9時間で目標額を達成したというニュースに、複雑な気持ちになったのは私だけではないようです。8月7日にスタート、締め切りは11月5日だそうで、その後も寄付は続き、先ほど科博のサイトを覗いたら¥6億を越えていました。金額によって返礼品(物品とは限らない)があるらしく、リターン品切れの場合は云々、という挨拶も出ています。

小学生の頃、万世橋鉄道博物館や上野の科学博物館は、庭続き同然の遊び場でした。あの薄暗い、埃っぽい、すこし不気味な展示室の空気が鼻先に思い出されます。それゆえ、CFの報道を見た時、出すべきかな、という気が頭を掠めたのですが、次の瞬間、待てよ、上野の科博が基本的業務の経費を寄付に頼らなければならないなんておかしくないか、という疑問が襲ってきました。科博でさえそうなら、他の文化施設はどうなる。

この際、利用者に支援者になって貰い、支持基盤を広げようということかなと公式サイトを調べると、確かに「仲間を増やす」ことも目的だと言っています。しかしそれは別事だろう。国立博物館の必要経費も出さない文化国家、自慢できる話なのか。

ふるさと納税もじつは寄付金控除を利用した制度です。しかし寄付金控除を受けられるのは年収の4割以下、と決められているので、年金生活者は高額の寄付をしても控除の恩恵をあまり受けられません。億万長者は節税のために盛大に、貧者は一灯を捧げて、ささやかな返礼品を愛玩するか。ところでミサイル1基って、幾らでしたっけ。