ふるさと納税

ふるさと納税なる制度ができた時、必ずしも故郷でなくともいいらしいと知って、傲慢無礼な元作家が知事を勤める都よりも、過疎の鳥取へ幾分か納税するかな、と考えたりしたのですが、その内返礼競争という妙な話が出てきて、実行しそびれました。納税に返礼って何だ、そんなに地方は税が余っているのか?なら、わざわざ振替納税する必要はない。

その疑問は的中していたようです。返礼競争はどんどん拡大、激化しました。理由は何だったのか。何故競争する必要があったのか。政府が制限を掛けるようになり、当初の目的は見失われていきました。返礼品として土地の名産を送って、地元出身者には懐かしさを届け、他地域出身者には宣伝を、という発想は理解できますが、それが自治体の人気投票みたいになってしまい、とめどがなくなった、という過程がよく分からない。どこかで立ち止まる自治体はなかったのか。

改めて考えてみると、今住んでいる自治体への納税額の一部を、自分が選んだ自治体への寄付に振り替えることができるというのは、純粋な寄付ではありません。もし納税先を選べるところまで踏み込んだら、税制の根本を変えることになったでしょう。納税先だけでなく使途も選べたらよかったのに、とつい思ってしまいます。

地方の予算不足を振替納税などでまかなわせるのは、政府が狡い。しかし遠く離れた故郷を思い出し、何がしかの貢献を思い立つきっかけを作るのは、いいアイディアです。返礼は、故郷の絵葉書や広報誌くらいでいいのではないでしょうか。

東京の街がすいています。この時季、帰郷や海外旅行で東京は空き、住みやすい規模になるのが例年だったのに、コロナでずっと駄目でした。ふるさとを持てるのは素晴らしいことです。何も景品で釣らなくてもいいのでは。

追記:川越の友人から、俺もふるさと納税については調べてみた、とメールが来ました。物品でなく地元広報の返礼をする自治体、使途を選べる自治体もあるのだそう。五島名産のジンが美味しいので、選ぼうかと思ったが人気沸騰で1年待ち、まっとうに代金を払って購入した、という。ジンが呑めるなら、自称下戸は偽りですね。