米寿と傘寿

朝、宅配便で新刊書が届きました。栃木孝惟著『源頼政と『平家物語』』(吉川弘文館)です。栃木さんは8歳年上の先輩、すごいなあ、この年齢で、と思いながら久しぶりに電話を掛けました。郵便に時間がかかるようになったし、高齢者はメールチェックをしないことが多いので、御礼を兼ねて雑談をしようと思ったのです。挨拶代わりに、お互いに耳が遠くなったこと、新しい記憶が残らないこと、知人の訃報などを交換し、近況を伺いました。

15回連続の平家物語講義の映像を作った、灌頂巻については新見もある、とのことで、有料配信だそうです(調べたら結構な価格)。本の御礼を言い、故梶原正昭さんに同じような題の著書があって、あれは素晴らしいと言うと同意されました。最近出た若い人の本がいい、逃げずに正面から取り組んでいる、という話でも意見が一致して盛り上がりました。同様に、雑誌掲載の旧稿をまとめて刊行して欲しい人のリストも、ほぼ一致。

外国の文芸理論を読む会も、今は呆け防止に続けているとのこと。学部1年で読んだフォースターの「小説とは何か」以降、外国の文芸理論からさまざまなことを学んだが、自分の論文の注にずらずら並べて誇示するものじゃない、という話に共鳴しました。私も、内外を問わず文芸理論は若い時期に体験し、自分の深奥で血肉化しておいた方がいいが、それに凭りかかるものではない、と考えているからです。

講義録はすべて原稿になっており、保元物語関係は3000枚、平家物語は12巻を通観したものがあるというので、それは遺稿を整理する者の身になって、1800枚くらいに詰めておいてください、2冊で出すならこれとこれ、1冊本ならこれ、と原稿に印を付けてと言ったら、80歳のオバアサンには頼まないよ、と言われてしまいました。