終日

冷たい雨の降った1日、終日、軍記物語講座第1巻予告のウェブ用原稿の校正に逐われていました。つまり、私にとっては、ふつうの1日でした。TVは終日、天皇退位の日、平成最後の日の中継(生中継できることは殆ど何もないのですが)で埋まり、普通のニュースを知るのに時間がかかって、いらいらさせられました。今夜は渋谷でカウントダウンがあるのでしょうか、大晦日でもないのに。日本人は、何でも新しくなる時が好きです。

ありがとう、の言葉が終日、上からも下からも飛び交いました。私たちは、何にありがとうと言うのでしょうか。この30年間、日本が戦災に巻き込まれなかったこと、務めを終えて去る人がそのことに安堵する気持ちはよく解ります。ご苦労様でした、とねぎらいたい気持ちで一杯です。でも・・・私たちは、安堵してもいいのでしょうか。じつはこの平和継続がすれすれのものだったこと、戦争に入っていかずに済んだのは、無名の多数の人々の、知られざる努力の結果だったこと、個人としては戦禍や紛争に巻き込まれて命を落とした人もあったことを、一晩で忘れていいわけではありません。

雨に濡れた二重橋前に何となく集まっている人たちの映像を視て、どこからか遠い記憶が襲ってくる感じに囚われたのは、私だけでしょうか。真夏の砂利の上に手をついて号泣する人々の写真を、思い出しませんか。

素朴な感情というものは、じつは怖い。誰かから利用されないように気をつけたいと思います。「いつか来た道」を、知らず知らず辿ったりしないように。