中世史講義

高橋典幸編『中世史講義(戦乱篇)』(ちくま新書 2020)を読みました。軍記物語講座(花鳥社)編集作業の参考に買っておいたのですが、あちこち必要な箇所を走り読みだけして、けっきょく読了したのは今になってしまいました。14人の研究者による分担執筆です。1保元・平治の乱 2治承・寿永の乱 3承久の乱 4文永・弘安の役 5南北朝の内乱 6永享の乱 7享徳の乱 8応仁の乱 9明応の政変 10西国の戦国争乱 11東国の戦国合戦 12石山合戦 13豊臣秀吉の統一戦争 14文禄・慶長の役 15総論 という項目立てになっています。

読みながら爽快でした。各項とも問題意識が明快で、従来の観点をふまえつつ新たな視角を明示しています。中世の流れがよく分かり、何が時代の変わり目なのか注目しながら読むことができます。新書ゆえ1項目は400字×25枚前後に収められていますが、単なる概説書に終わっていない。高校以来、乱雑な断片的知識だった戦国史がようやく呑み込めた気がしました(中国地方の戦乱に関しては、未整理の感がありますが)。

どうしたらこういう論集が出来るだろうー軍記物語講座もこういう風に仕上げたかったんだけど、と思いました。恐らく、執筆要項に「軍記物語講義」を25枚で書いてくれと指定したら、諸説羅列の事典みたいになってしまっていたでしょう。幸い、それは避けられましたが、これほど簡明に、しかも新しい研究方向を明確に指し示す文章が揃うのは、編者の腕だけではなく、学問分野の成熟度によるのかもしれません。

がんばって勉強しなくちゃ。改めてそう思いました。日本史の専門家たちの目から見れば不満は多々あるのかもしれませんが、文学の立場からこれを超える水準の新書は、急には出せないなと、いささか落ち込んだ午後でした。