デジタル古典研究のヒント

八木書店から送られてきたリーフレットで、石井悠加さんの「デジタル×古典研究のヒント集」という文章を読みました。ジャパンナレッジLibの電子版史料纂集・群書類従の宣伝ですが、昨年11月の図書館総合展フォーラムでの講演録からの抜粋だそうです。

石井さんは、中世の絵巻と和歌や仏教説話の関係を研究していますが、オンラインで史料や作品の本文を検索する方法、その結果をどう活かすかを、日本古典文学を研究しようとする学生と彼らを支援する図書館員に対して、自分の経験から分かりやすく語ったものです。デジタルの世界もこんなにわかりやすく語れるんだ、と感服しました。

電子版史料纂集・群書類従を教育利用するに当たって、まず3つのヒントを挙げました。➀もとの姿のイメージをもつこと ②キーワードを工夫すること ③自分自身の興味からアプローチすること の3点です。➀は紙媒体の史料纂集・群書類従を知らずに電子版を使うことは難しいので、まずは書籍版を手に取って見ることを勧め、図書館はそう誘導するような工夫をして欲しい、と言っています。なるほど。いきなりアナログ対デジタルという文明対立ではなく、もともと書籍版から作られたものなので、という素直な説明です。②は私がよく知らなかったせいもありますが、なあるほどこういう風に検索を使い分け、組み合わせて有効な方法にしていくのか、と感服、納得。③については異なる分野への柔軟さを大事にしています。

後半は研究利用のヒントとして自分の体験を挙げ、その豊かさ、面白さを窺わせる内容になっています。平治物語絵巻には「闇」そのものは描かれていないが、闇と光の変化は画面上にちゃんと描かれている、という話はとても面白かったし、漢文日記を検索して「闇」とか「明け方」の記事を捉まえた結果の話も面白い。お奨めです。