信濃便り・庭前薔薇篇

長野の友人から写メールが来ました。同居の妹さんが転んで、当分経過観察になり、彼女が妹さんのご主人と手分けして家事を引き受け、今まで切り盛りしていた主婦の偉大さを改めて認識している毎日らしい。

リンカーン

我が家の紅薔薇は4輪咲きましたが、細かな葉ダニがついて落葉し、丸坊主になってしまいました。思い切って剪定して身軽にしてやるかと考えているところです。

薔薇は平安時代から日本にもあったようで、実を薬用にしたらしい。和漢朗詠集には「首夏」(初夏)の項に、白楽天の詩の一節が載っています。

甕の頭の竹葉は春を経て熟す 階の底の薔薇は夏に入て開く

去年の冬に仕込んだ酒は春を経て熟した、階段の下の薔薇は夏を迎えて開いた(さあ一献吞もうではないか、花を見ながら)。

無名草子の冒頭、83歳の老婆は5月10日過ぎ、仏前の供花を摘みに東山辺りを歩くうち、竹の植え込みや卯花垣などのある、庭の広い古屋敷に迷い入り、若い女性たちに乞われて経を読みます。その後、女性たちの会話に耳を傾けて一夜を過ごします。

前栽むらむらいと多く見ゆれど、まだ咲かぬ夏草の繁みいとむつかしげなる中に、撫子、長春華ばかりぞ、いとこころよげに盛りと見ゆる。軒近き若木の桜なども花盛り思ひやらるる木立をかし。

長春華は四季咲きの薔薇。青草が伸び放題、葉桜の木下闇に撫子や薔薇が混じって咲くのを見ながら、女性たちは物語や歌集の批評を語り合うのでした。

アプリコット

近世初期の奈良絵本には、ときどき八重咲きの薔薇が屋敷の庭先に描かれます。牡丹に似ていますが、葉の形と蕾とが違うので薔薇だと分かります。