再会

鶴見大学にお願いしていた長門本平家物語閲覧に出かけました。湘南育ちの私は戸塚や鶴見の位置の記憶があやふや、京浜東北線横須賀線を取り違え、横浜から引き返して東神奈川で乗り換えるというへまをやり、どうにか辿り着きました。

新しく所蔵された長門本20冊は、『思文閣古書資料目録』279号で見た時から、半世紀以上前、福岡で見せて頂いた本ではないかと思っていたのですが、往時のメモと照合して、ますますその感を強くしました。ただ蔵書印など伝来を示す手がかりがないので、あの本の忠実な写し(または底本)の可能性も零とは言えません。福岡の宿で一晩お借りしてメモを取った、あの本(所蔵者はもう亡くなりました)との再会なのかと思うと、お互いにはるばる来つるものかな、という感慨に襲われました。

平藤幸さんや中川博夫さんが立ち会って下さり、明倫館旧蔵長門本や、長門切などの貴重な資料も見せて頂き、さまざまな話をしました。非破壊検査の技術が進んだ今日、料紙でなく墨の年代を光化学反応か何かで調べられるようにならないのかとか、国文学者はもっとジャンルを超えて書誌学的知識の交換をしなければ、とか、室町から近世にかけて平家物語諸本のあり方はどんな風だったのかとか・・・久々に専門家と生まの話題でお喋りしたので、私もつい饒舌になりました。

長門本の伝本研究も、若い頃は写本の多さに圧倒されて逃げ出してしまったけれど、今になって冷静に見ていくと、近世の知識人たちとの手がかりが沢山残されている。それらを根気よくたどり、書写の特徴と付き合わせていけば、80点近い伝本を、少なくともグループ分けすることくらいはできるんじゃないか。そういう話もして、帰りました。

来年秋には、そんな本を出します。作業が進むにつれて、目下、新資料も続々。