山口の蒲鉾

20日の朝はまず安徳天皇の神前にお参りしました。その後、昨年末購入された長門本平家物語の明治34年写本を、閲覧させて頂きました。黒川真頼本(関東大震災で焼失)を三田葆光が透き写しした20冊。赤間神宮は焼損した旧国宝本のほかに3点、長門本を所蔵することになりました。この三田本を手がかりに、長門本を通して、平家物語自身の歴史に新たな観点を導入できるのではないかと考えているところです。すると、ちょうどこの日の朝日新聞山口版に、長府博物館の記事が載り、伊藤家本長門本の写真が掲載されました。まるで天が私たちの意図を知っているかのように。

名誉宮司の水野さんは大連育ちで今年米寿、80歳で宮司職を退きました。國學院大學の史学科出身、鈴木敬三氏の愛弟子で有職故実の専門家です。学問への敬意が全身から滲み出るような方で、かつての師弟関係の思い出話や雅楽の話、皇室儀礼、神官修業、大連のことなど、貴重な回顧談を活き活きと語られました。かつては門司に寄港する船から、水天門を遠望して興味を持った船員たちが、艀でやって来たものだった、こちらからは1升瓶を差し入れに行き、船員用のラベルのないワインを酌み交わした、南米の船員が多かったが、今はコンテナ船ばかりでそういう交流はなくなった、とのこと。

午どきには関門海峡を通る船の汽笛が響き渡りました。旅情満点です。私は一足先に帰京するので、午後、唐戸のバス停から山口宇部空港へ向かいました。

唐戸市場

唐戸は、九州からもわざわざ買い付けに来るほどの海産物の大市場です。シャトルバスで空港に着き、ホテルで貰った「旅々やまぐち割プラス」券で、夏蜜柑のマーマレードと蒲鉾「銀雪」「新川」を買いました。山口へ来たら、やっぱりこれを買わなくっちゃ。地酒も買いたかったけど、リュックに入らないので諦めました。