朝廷儀礼

近藤好和さんの「『江家次第』にみる朝廷儀礼の式次第」(季刊「古代文化」)を読んでいます。古代学協会の機関誌への連載で、最近出たのは即位式(三)(2022/6)から大嘗会(一)~(三)(2022/9~23/3)の部分。碩学大江匡房有職故実書『江家次第』(1099以降成立)所載の朝廷儀礼の式次第について、他の故実書や当時の漢文日記などをも参照しながら読み解いていく作業です。

知らないことばかりの世界なので、読解の是非は私には分かりませんが、朝廷社会の儀礼が、いかに人手を惜しまぬ、神秘性を尊ぶものだったかを改めて認識させられます。それこそが、天皇を頂点とする貴族社会を維持していくよりどころでもあったわけでしょう。注釈としては、もっと紙面が与えられて単行本化する際には、読みやすいレイアウトを工夫して欲しい。小さな字で横書2段組、では内容を見渡しにくいからです。

近藤さんは、『有職故実大辞典』(吉川弘文館 1996)の著者鈴木敬三氏の最後の弟子です。1957生まれ、『中世的武具の成立と武士』(吉川弘文館 2000)で学位を取得、多くの著書がありますが、母上の介護のため一切の職を辞し、自宅でこの注釈を続けてきました。それでも母の世話を他人に委ねる気はない、と断言していました。母上を見送り、自身の大病も落ち着いたようですので、活動再開を期待したいところ。

鈴木敬三氏の最初の弟子が、赤間神宮名誉宮司の水野直房さんです。学生時代、毎晩恩師の自宅で有職故実の話を聴き、終電のなくなる頃、渋谷駅まで歩いた、と思い出を語っておられました。まさに口伝です。3月に下関でお会いした際、近藤さんはどうしているかと尋ねられました。『海王宮』(三弥井書店 2005)に近藤さんが執筆して以来、気になっていたとのこと。学統の本と末、20数年の時間が繋がりました。