軍記・語り物研究会講演

軍記・語り物研究会の講演を聴きに行きました。開会前に、講師の松薗斉さんと上横手雅敬さんとに御挨拶がてら、雑談をしました。上横手さんには赤間神宮の記念論集『海王宮』に書いて頂いたことがあったので、宮司の噂から天皇の代替わりの話題になりました。京都では東京とは違った受け止め方がある、という話になったところで、開演。

松薗さんの話は「13世紀の知識人をめぐって」という題でしたが、12世紀から13世紀にかけて、貴族たちの世界の有職故実が、より広い、下層の世界へ流出していって、それらを材料に、またはそれらを理解するために、説話集や随筆が書かれるようになったのではないか、そういう話材も年代記的整理をすると、一見『百練抄』のような史書とよく似たものになり、一種の歴史意識を持って文芸活動を行ったのでは、という話で、私がこの頃考えていたことと、あちこちでスイッチしました。史料的にもしっかり裏付けがされていて、いつもながら安心して聴くことができました。

上横手さんのお話は、「たけき者の群像」と題して、藤原信頼・鹿ヶ谷事件の清盛・治承3年クーデターの清盛・義仲・頼朝・北条義時の例を挙げ、王権に反抗した事実とはどんなものだったかを検証し、結局、義時以前は軍記物語の言うような叛逆は行われておらず、真に武士の世になったのは承久の乱以後ではないか、との内容でした。若い頃の仕事を見直して、いま気づくことがある、と仰言っていましたが、それはまさに、私も経験している最中だったので、共感しました。

京都には常態への修復力がある、と洩らされたり、石母田正の言う、将門以来の東国人の叛逆的精神という見方に、この頃反発しなくなったとの発言は、いかにも京都の学者らしい気がして、猛暑に脅えながらも聴きに来てよかった、と思いました。