朝廷儀礼の式次第

近藤好和さんの「『江家次第』にみる朝廷儀礼の式次第(1)~(4)」(季刊「古代文化」73:1~4 2021/6,9,12,2022/3)を読みました。皇位継承儀礼の一部始終を追って連載で解説しています。(1)(2)は譲位、(3)(4)は即位式の準備完了までですが、今後も連載形式で考証していくとのことです。

(1)の巻頭言によれば、日本の国家儀礼弘仁12年(821)に唐礼を受容した儀式の『内裏式』が完成し、その後清和天皇の時代に『貞観儀式』が新たに編纂されたが、宇多天皇の代から摂関期に入り、律令官僚機構の枠組を残しつつも天皇の身内関係を構成原理として政治体制が変質し、政務や儀礼にも変化があったというのです。そして摂関期には有職故実が成立し、公事の先例・故実が記録されるようになり、それらの集大成として儀式書が編纂されるようになった、と述べています。

中でも基本的な儀式書が『西宮記』(源高明)、『北山抄』(藤原公任)、『江家次第』(大江匡房)で、最も具体的で詳細な記述のある『江家次第』を中心に、他の儀式書や漢文日記をも参照しながら解説を加えています。ところどころ書物ごとの食い違いや、詳細が分からない部分もあるようですが、意欲的で有益な解説です。但しレイアウトが読みにくい(横書きのせいもある)。まとめて単行本にする際には、ぜひ有能な編集者の知恵を借りて、工夫して下さい。

臨時の公事として譲位・即位式大嘗祭をまず取り上げ、次いで恒例公事を年中行事の順に取り上げる予定だそうで、遠大な作業・・・初志貫徹を期待したいと思います。書簡によると、近藤さんは御母堂の介護のために一切の職を退き、自宅でこの仕事に専念するとのこと。在宅ワークの一大記念碑になるかもしれません。