関西軍記物語研究会105例会

関西軍記物語研究会の例会にオンライン参加しました。zoomと関西学院大学の会場とのハイブリッド形式です。オンライン参加20人前後、合計30人前後でしょうか。論文集『軍記物語の窓 第6集』(和泉書院)が出たばかりで、士気は揚がっていました。

1本目の発表は柳川響さんの「藤原忠通と幼学書」。保元の乱で弟頼長と対立した忠通は、書や詩文に優れていたと伝えられていますが、彼の実作に丹念に注釈を施す中で得られた問題、主として忠通の使用した特殊語彙の典拠に関する考察でした。軍記物語研究からの視点ではなく、どちらかと言えば和漢比較文学のテーマでしょうか。広く検索し、丹念に調べた努力はよく分かりました。しかしこれまで度々書いてきたことですが、持ち時間の決められた口頭発表を引き受けたら、ストップウオッチを持って予行演習をしておくのは必須。またオンラインの場合、資料原稿を何十枚も印刷させられるのは迷惑です。当日は画面共有するのが原則、もしできないのなら、前日までにそう予告して欲しい。研究発表は聴き手あってのもの、理解されてなんぼ、です。

2本目は宮越直人さんの「『曽我物語』の絵画化の諸相」。10年程前の共同研究の成果を踏まえて、曽我物語とその周辺、殊に頼朝への視点を中心に、軍記物語の絵画資料研究の現状と問題点を照射した、有益な話でした。zoomは不慣れ、と言いながら、大変分かりやすく、要領よく話してくれました。

曽我物語は屏風が多いのでしょうか、意外に絵巻、絵本は少ないんだな、と思いました。しかし数の割には個性がまちまちで、平家物語源平盛衰記の絵本との比較など、これから本格的になる領域でしょう。近世、歌舞伎の影響が強くなるとまた別の動きが始まり、2つの流れが絡み合って見えるのが現代、なのかもしれません。

追記>当日話の出た島津家旧蔵奈良絵本平家物語は、さる古書店主所蔵、神戸市立博物館委託。列帖装30帖の豪華な本で、最少限度の書誌は『文化現象としての源平盛衰記』(笠間書院 2015)のp685に載っています。