信濃便り・宝珠篇

長野の友人の庭では、去年我が家から送った観賞用パプリカの苗を冬越しさせて育て、豆電球のような実が色づき始めた、と写メールが来ました。

2年越しのパプリカ

なるほどこんなに大きくなるのか。一昨年花屋で苗を買った時は、実の色が赤と黄色と紫の3種を揃えた心算だったのですが、我が家で育てたら全部赤くなってしまい、採種して翌年播いたら全部黄色になってしまったのでした。花屋は、実生では本卦還りするから、と言ったのですが、写真を見ると、1株に白、紫、黄、赤と、宝珠の造り物のように色とりどりの実がついています。これは観賞に堪えます。

我が家では今夏、3代目の実生を育てました。濃い緑の葉陰に咲く星形の白い小さな花も可愛いが、丸みを帯びた三角錐形の緑の実が頭をもたげてくると、小さいながらも威風堂々という感じになります。

日々草の勁さに圧倒される近年は、コリウスやコキアのような葉物を混ぜ植えして夏の照り返し対策にしていたのですが、今年は苗を同時に入手できず、それぞれ別のプランターに植えたところ、コキアが蓬髪状態になり、枝はまるでカーリーヘアのようになってしまいました。子供の頃、事典で覚えた「麻の中の蓬」という諺を思い出します。今年の主役はトレニアで、売れ残りの貧相な苗だった日々草も逞しくなり、代わる代わる咲き続けて目を楽しませてくれています。

だんだん陽ざしが移動して、室内に近づいてきました。日照を好むもの、半日陰が向いているもの、それぞれ鉢を移動させてやらなくては。早くもムスカリの芽も出始めています。「歳月人を俟たず」を眼前に突きつけられながら、「雪山の鳥」の喩え通り、逡巡に満ちた毎日を送り迎えしているのです。