信濃便り・かまつか篇

長野の友人から、5年越しに育てたカマツカの花が咲いた、と写メールが来ました。

カマツカの花

【気温も上がり、武家屋敷のお土産用苗木はどんどんはけているようで、供給作業で忙しくしております。我が家でも、実生の苗から育った鎌柄の花が咲きました。】

カマツカは薔薇や林檎の仲間で、晩秋に紅葉し、真っ赤な小さい実が美しい。いつだったか北国の宿で料理の皿に添えられていて、食べられるのかどうか迷いましたが、いま調べてみると、食べられるが美味しくない、とある。観賞用なのでしょう。若芽は食用になるそうです。

最初にこの木の名を見た時は平仮名書きだったの(未だ促音を小字にしない表記の時代の本)で、発音はカマツカかカマッカか、何となく「真っ赤」な実のイメージが強くてカマッカだと決め込んでいたのですが、じつは木材が鎌や斧、中でも石屋用の玄翁の柄に愛用され、「鎌柄」と書くのだと知りました。

それを知ったのは、5年前に長野の友人を訪ねた時、地元の武家屋敷を管理している人から教えられたのがきっかけでした。保護活動の一環として、増えすぎる庭木のひこばえを苗に育てて、希望者に配っている所もあるのだそうです。なるほど、地域の文化財に愛着を持って貰うにはいいかもしれません。友人のメールにあった、お土産用苗木配布の話は、その活動のことです。

東大の定年目前の人が、構内から木の実を拾って持ち帰る話も聞いたことがあります。楓や欅は発芽しやすく、大樹の周辺にスプラウト状態の芽生えを見かけることもあるので、記念樹向きです。大木になっても大丈夫な庭があれば、ですが。