隣家の猫

美容院へ行く途中、通称落第横町の入り口で、小さな生き物がちょろちょろと走りました。巣立ちの子雀かな、いや小雨の中を鳥が地上にいるのはおかしい、と思ってよく見たら、鼠でした。最近この界隈では、昼日中に鼠が道を横切るのに出会うことがあります。正月3が日に、車に轢かれた死骸を見たこともありました。

美容院の親父にその話をしたら、いますよ、この辺は飲食店もあるし、と言う。この頃猫が出歩かなくなったからね、と言ったら、そうなんですよ!と力を籠めて言う。隣の家の猫は以前はよく鼠を捕ったのに、最近は飼主が外へ出さないので1日中2階の窓から外を見てる(いわゆるニャルソックです)、という。その口調には、やや憤慨の気味があり、休日に自転車で買物をして歩く以外は店舗にいなければならない身としては、隣家からずっと見つめられているのは、面白くないのかも知れないな、と推測しました。

犬を見ると吠えるんですよ、と言う。猫は「吠える」とは言わない、「啼く」じゃないかなと聞き返したのですが、「吠える」のだそうです。気の強い猫だね、と言ったら、散歩の時は飼主を引っ張って歩いてる、となお憤慨していました。

都市の鼠害は思わぬ結果をもたらすことがあるそうで、病原菌を媒介するだけでなく、見えない箇所の配線を囓って漏電や停電の原因になったりするのだそうです。猫が家飼いになったことでそんな事態が起きるとは、予想されていなかったでしょう。昔は、猫は餌を出してくれる家を渡り歩いていたもんだったよね、人間は自分ちの猫だと思っているけど猫の方は自由、と言ったら、隣の猫もあちこちで食べてた、とのこと。

しかし今どきの猫は、仰向けになって寝るからもう戸外では暮らせないだろうという話の後、明日はオンライン会議でお辞儀をするから、と三面鏡で頭頂を確かめて帰りました。