阿波国便り・国分寺篇

徳島の原水さんから、耐震補強工事が済んだ国分寺へ行ってみたとメールが来ました。

阿波国分寺

国分寺は、以前は崩れ落ちそうな感じで伽藍内部が古色を帯び、今まで巡った徳島の寺院では一番のお気に入りでした。ところが昨年改修され、綺麗にはなりましたが、雅趣がなくなってしまいました。私としては残念です(原水民樹)】。

本堂

調べると、天正年間に兵火で焼け荒廃していたが、江戸時代に再建されたとのこと。それでも300年経てば古色がつき、私たちにとっての「神社仏閣」らしい懐かしさを発揮していたのでしょう。木材や自然石で造られたものには、歳月が足してくれる風格があります。それを洗い落としてしまうと、何だかよそよそしくなる。

七重の塔礎石

もとは七重の塔があったらしいのですが、塔の位置も姿も今は分からなくなったようです。国分寺四国八十八箇所の札所でもあり、石組みが珍しい庭園もあったとのこと。かつて移動がたやすくなかった時代には、各地にそれぞれの文化があり、中心となる名所があった。今の眼で見ると、地方にこんな立派な建築物、それを造る技術があったのかと驚きますが、殆どの人が生まれた土地から離れずに一生を終えた時代には、それぞれの土地に人知を尽くした文化遺産があって、それらを守っていく歴史があって、人それぞれの世界観を創りあげるよすがとなっていたのだ、と改めて思います。