阿波国便り・藪漕ぎ篇

徳島の原水民樹さんから、「散歩に出かけると、「昔の人の袖の香」(当然、そんな体験はありません)の漂う季節です」とメールが来ました。

東京でも2日ぶりくらいで街に出たら、若葉から木下闇の季節になっていて、吃驚しました。この時季は、ひっそりと葉陰に柑橘類の花が咲いていることがあります。橘の香りは過去の恋人の袖に染みた香を思い出させる、というのが和歌の世界の約束事です。徳島はきっと、そこら中にスダチの花が咲いているのでしょう。

山越えで見た海

【小神子海岸に出かけてみました。大神子海岸の隣にありますが、山越えの細道をたどらねばならず、駐車場もないので、土地の人以外は知らない場所ではないでしょうか。ほとんど人がいません。

先代犬は水が苦手でしたが、さくらは恐れを知らず、波と戯れて楽しそうでした。暑くてしんどかったけれど、さくらがはしゃいでいたので、まあ良かったかな、と思いました(原水民樹)】。

小松島灯台

以前、阿波国便りで大神子海岸のことを書きましたが、小神子(こみこ)海岸は途中、けものみちを辿るような山越えをしなければならないらしい。ウェブ上で、ひたすら藪漕ぎをして小神子海岸への道を撮影したオジサンのブログを見つけました。人の知らない道をたどるのは、古今、老若を問わず、わくわくするもののようです。

愛犬さくら

私は湘南育ちなので、山中のけものみちだの峠越えだのの冒険をしたことはありませんが、それでも昭和20年代の茅ヶ崎には未だ、松林の下草を藪漕ぎするくらいの場所がありました。幼い弟と、黒松の木の間を隠れたり出たりしていてふと、たった1本、真紅に紅葉した蔦の絡まる幹を見つけたことを、今も鮮やかに思い出します。